
チェシャネコが知っている真実
「ねえ、おかあさん、またあのえほんよんで」
「また?幸太はこの本が好きね」
このえほんのネコはなんまんかいもしんだり、いきたりをくりかえしている。
なんどきいてもあきないし、なんどきいても……どんなはなしなのか、おぼえられない。
ボクはのうのびょうきだ。
あたまのなかにコブのようなものができて、それがあぶないのだと、おとなのひとたちはいっている。
あたまをきるしゅじゅつもやった。ボクのあたまはミイラおとこみたいにほうたいでぐるぐるまきだ。
かみのけがはえるまえに、きったり、つよいくすりをのんだりするから、ボクはいつだって、つるつるのはげぼうずだ。
しゅじゅつはうまくいったみたいで、もうやらなくてもよくなったらしい。うれしい。
おいしゃさんに「もう、しゅじゅつはやりません。これいじょうは、いみがありません」といわれたそのひ、おかあさんはすぐにそとにでて、おとうさんにでんわをした。
よっぽどうれしかったみたいで、めとかおをまっかにして、くちびるをぎゅっとかみながら、びょうしつにかえってきた。
おかあさんは、ぼくのまえではぜったいなかないけど、よなかのびょういんで、かくれて、ないているのをボクはしっている。でも、もうなかなくていいからね。
なんまんかいもいきた、ねこ。
このえほんをよんでもらうのが、ぼくはすごくすきだ。
えほんをよんでもらっていると、いつのまにかねてしまう。
そして、ボクはふしぎなせかいのゆめをみる。
そのせかいでは、ボクはネコになっている。
ボクはこのせかいなら、なんまんかいもいきられるのかな?
ボクにはこのせかいで、なにかやらなければならないことがあるきがする。
ほかのひとにこのせかいはぼくのゆめなんだよ、といおうとすると、ゆめからさめてしまう。だから、これはひみつにしなきゃいけない。
追加ミッション
・この世界があなたの夢の世界だと誰にも知られてはいけない