
「あの人はいったい、どこへ行ってしまったの……?」
ワンダーランドで一番の美人。皆に幸せをふりまく、誰もが好きな公爵夫人こと私は、ワンダーランドで一番、不幸な女だった。
帽子屋もトランプの兵隊もドードー鳥も、みんなが私に告白をしてきた。私は笑顔でそれを受け流した。
私は愛されたいのではなく、愛したいのだ。心の底から。
そんな中、私はあの人に出会った。趣味で研究をやっている変わり者の公爵。彼は私に見向きもしなかった。
彼の夢はこの世界ではない別の世界へ行くことらしい。
心は今でなく、ここでない場所に向かって羽ばたいていた。彼は少年のようなキラキラした目で熱く夢を語るのだった。
「もしも、ここより外の世界へ行けたら、素敵だと思わないかい?」
「そうね。もし公爵様の夢が叶ったら、私もお供させてくださいな」
私は次第に彼に惹かれていき、遂には公爵夫人となった。
彼は研究のために何でもやった。勝手に森の木を切ったり、キノコを採取して胞子を分析したり。やれることは何でもやった。
あるとき、ご禁制の薬品が入った水タバコを吸い、その煙を隠しもせずにABCの形にして空に浮かべたものだから、ハートの女王から指名手配されてしまった。そして彼は行方不明になった。
私はワンダーランド中を探し回ったけど、見つからなかった。
いつか傷心をいやしてくれるかもしれないと思い、捨てられていた子猫のチェシャネコを拾って育ててみたが、私の心は満たされなかった。
悲嘆にくれる私を慰めてくれたのはアリスだった。彼女は私を毎日慰め、一緒に公爵を探すのを手伝ってくれた。こんなに優しい娘は他にいない。
そんなある日、時計ウサギが急報を知らせた。アリスが死んだ、と。
そして、最近アリスとよく一緒にいた私にも容疑の目が向けられている。私は膝から崩れ落ちた。どうしてこうなってしまったのか?
ミッション
・アリスを殺した真犯人を見つけ出さなければならない。