「ボクはあの人のために、一生わらい続けるんだにゃー」

本当だったら、ボクは子猫の時に死んでいた。

親とはぐれた………いや、捨てられたんだ。他の動物の匂いが体についていたから。
空腹で弱り、森の奥の沼地のそばで、動けなくなって倒れていた。ハゲタカたちが木の上でボクが死ぬのを待っていた。
ああ、苦しい。ボクはこのまま死んでしまうのだろうか?

そんな時、ボクの目の前に上品なドレスを着た女性が現れた。

「かわいそうに」

彼女は屈んで、手を差し伸べてくれた。彼女のやわらかい腕がボクを抱き寄せ、そっと優しく包んでくれた。
彼女が公爵夫人(マダム)だった。彼女はボクを屋敷に連れ帰り、介抱し、温かいミルクを与えて、消えかけていた命を救ってくれた。

マダムと出会う前までは、何もかもが怖かった。
森でたくさんの動物に襲われた。だから、屋敷のメイドさんや執事さんがボクに触ろうとするたびに、無表情に身をすくめて震えた。
太陽の届かない暗い森で逃げ回っていた頃のように、誰かにひどいことをされるかもしれない。

でも、ここではそんなことは無かった。マダムはいつもボクを優しく撫でてくれた。不思議と震えが止まった。日が経つにつれ、僕は震えなくなっていった。
だんだん、食べ物の味が分かるようになった。おいしい。ボク専用のちいさな布団が、温かい。ボクはマダムが好きだ。
ボクはマダムを見上げて、ぎこちなく笑った。彼女はボクの初めての笑顔を見て、自分のことのように喜んでくれた。

その時、ボクは誓ったのだ。
ボクは一生、彼女のために笑い続けるのだと。

そんなある日、不思議の国で殺人事件が起きた。アリスが死んだのだ。犯人はまだ捕まっていない。
そして、行方不明になっている公爵の夫人として、マダムにも疑いの目が向けられている。道に迷ったボクを、深い迷宮から救ってくれたマダム。
今度はボクがあなたを助けてあげる番だ。あの笑顔をもう一度見るためなら何だってしてやるニャ。

ミッション

・アリスを殺した真犯人を見つけ出さなければならない。