幸せのカタチ 最終話【個別リアクションB:ウロの気持ち】
酒は百薬の長?
あぁでもないこうでもない。幸せのカタチとはなんなのか?
姫とウロとの結婚について様々な議論が飛び交う喫茶Ozの店内。その様子を、ウロは複雑な表情で見つめていた。
そこへ近付いていく者がいた。【白井花】だ。
「ウロさん! 私が言いたいことは分かりましたよね? あなたにはまずお金がないです。立派な衣装もなければ、意気地もない。つまりは甲斐性なしなんです」
無い無い尽くしの言葉の槍が、ウロを串刺しにしていく。
「花ちゃんもうやめて! ウロのライフはゼロよ!」
あまりのことに、咄嗟に【北楯さくら】が止めに入る。それでも花は止まらない。
「木箱の鍵が無くなっちゃったのも、神様のお告げかもしれないですよ〜。プロポーズやめとけって」
「や、やっぱりそうなんですかね。これも運命なのかもなぁ……」
「ちょ、ちょっとウロさん!?」
ウロが挫けそうになっているところを、さくらは見ていられなかった。
ウロが姫のことを想って用意してきた様々な物、そして何より一緒に積み重ねてきた時間。これは今ここにいる他の誰にもわからないものだ。
だからこそ、姫はあんなに怒っていたのではないだろうか?
人は、どうでもいい人に対して気持ちを動かしたりはしない。
「花ちゃん、流石に言い過ぎだって。プロポーズをするかどうかは、少なくともウロさんが決めるべき。……でも、他人から何か言われたくらいで迷うなら、やめといた方がいいのかもしれませんね」
さくらがまっすぐウロを見つめる。その言葉と視線に、ウロは黙ってしまう。
「ただねウロさん、聞いてほしいんです。他にたくさんいくらでも良いお相手のお話、お姫様ならあると思うんです」
「……そ、そうだと思います」
がっくりと落としかけたウロの肩を、さくらはがっしりと掴んだ。
「だから考えてほしいんです。お姫様のこと。勝手に不安がって勝手に諦めて、勝手にお姫様の幸せを決めないであげてください」
その視線以上にまっすぐなさくらの言葉に、ウロは顔を上げる。
「姫の……幸せ?」
「そうです。お姫様の幸せはなんなのか。ウロさんの幸せはなんなのか。二人の幸せのカタチって、どんなものなのか」
「幸せのカタチ……」
「それは二人にしかわからないものなんですよ」
この場にいない姫のことを頭に浮かべているのだろうか。ウロはじっと考え込む。その様子を見ていた【佐波里玄盛】がウロの肩をポンポンと叩く。
「なぁ、兄ちゃん。後学のために箱の細工の意味を教えてくれねぇか? 惚れたヒトに向けてだ。何かしらの意味はあるんだろ?」
ウロが自身の手で作った木箱。その中には姫に想いを伝えるための指輪が入っている。
その特別な箱には、様々な装飾が施されていた。糸のような紐のような装飾が張り巡らされており、中心にある丸い形の装飾を結ぶように絡み合っている。そしてその周りには、花びらのような形の装飾がいくつか描かれているのだ。
「箱の細工、ですか。大した意味はありませんよ」
「それを決めるのは、兄ちゃんじゃねぇよ」
玄盛の言葉におされてか、ウロは少しづつ語り始める。
「箱に沢山描かれている紐は、僕と姫様の生きてきた時間……人生、みたいなもののつもりで、本来交わるはずのなかった僕たちの道が、真ん中の円。これは指輪なんですけど。その指輪を中心に、結ばれて交わっていく。この出会いを、この縁を大切にしたくて」
全員がウロの話に耳を傾ける。あれだけ反対していた花も、真剣な表情で聞いている。
「花びらは? ありゃあなんだい?」
玄盛の問いかけに、ウロは気まずそうに微笑む。
「花びら、に見えちゃいますよね。あれ……ちょっと恥ずかしいんですけど、ハートのつもりなんです。姫様、意外にそういうの好きで」
「意外じゃない!!」
さくらが反射的にウロの頭をはたく。
「あ、ごめんなさい」
「いえ……でもこれ作ってる時は、必死だったなぁ」
ウロが愛おしそうに、木箱を持ち上げる。
「それをよぉ、そのまま伝えてやったらいいんじゃないのかい?」
「え?」
「今俺たちに聞かせてくれたそれを、そのまま姫様に伝えてやんなよ。それをどうしたいか、どう思うのかは、姫様が決めることだ」
玄盛の言葉に、周りの全員が頷いている。花も同様だ。
「……はい! ありがとうございます!! ぐぇっ!」
ハツラツとした表情で前を向いたウロの胸ぐらを、花が突如として掴み上げる。
「ただし、酒はだめだ……よ♡」
お酒はほどほどに。
担当:為房大輔
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合言葉を忘れずにね。
