青空まであと一歩 最終話【個別リアクションC:プラネタリウムへ向かう】
星のきらめきを見上げて
星を眺めるプラネタリウムに、エルはどうしてわざわざ入り込んできたのだろうか。
少女の憧れを察して、エルも寄り添いたかったのか。
虹村が探し求めている中、エルは何を想い、何を星に願うのか。
……そんな感傷じみたことをつい考えてしまいそうになるのは、星の静かな美しさのせいだろうか。
このプラネタリウムの中で調査を続けることを選んだ人たちは、座席を調べ出したり、職員に話を聞こうと思い思いに行動に移った。
「あっ、なんか落ちてる!!」
さっそく声を上げたのは【白井花】だ。
だがすぐに、その声が萎む。
「……ただのビニール袋だった……」
ゴミはゴミ箱に〜……と切ない声を上げて、いったんその場から離れていく。
白井花の声に驚いた面々は肩透かしをくらったことに嘆息しつつ、視線をそれぞれ戻す。
「職員の人に少し話を聞けたらなぁ……」
けれど、施設の人はそれぞれの仕事で忙しそうだ。
雨天の中閑散としているとはいえ、通常業務とは違うイレギュラーなことを求められるのは避けたいのだろう、事なかれ主義なのか、なんとなく忌避感を醸し出してきている。
そんな中、どの人に声をかければ一番実りがありそうかを品定めする【北楯さくら】は、背後から何かがぶつかってきて驚く。
「わっ……!? す、すみません!」
「…………」
北楯さくらにぶつかった人──【リク】は、何も言葉は返してくれなかったが、ぺこりと首を縦に振る。
そしてその後ろに、この施設の職員らしき人もいることに気づく。
「お客様、施設内は暗くなっておりますのでお気をつけくださいませ」
「ありがとうございます」
話しかけてくれたのはありがたい、そのままの流れで少し情報を得られないかと、北楯さくらは【天野輝】という、まさにプラネタリウムにぴったりな名前が書かれたネームプレートを胸につけた人物と話をしてみることにした。
…………──思わず、さくらが閉口してしまうほど、天野輝は饒舌だった。
「それでですね、とにかく私は大平技研の大平さんが憧れでして。知ってます? 大平技研の大平さん」
「不勉強ですみません、存じ上げず」
「そっかぁ、でもそうですよね。もし気になったらぜひ一度調べてみてください。お時間さえあればこのままプレゼンさせていただくのですが」
「あ、それはちょっと、ご遠慮させていただければと……」
「ですよね。どうにも皆様、何かをお探しのようで。お力になれるかは分かりませんが、気になることがあるのでしたらなんでも聞いてください」
数十分にわたる世間話に付き合った甲斐があったかもしれない……と若干の期待を持ちつつ、北楯さくらは天野輝に「この施設で猫を見かけなかったか」と聞く。
「猫ですか? そうですねぇ……何度か見かけたことはありますが、不思議といつもすぐに姿を消していて、いたかどうかも定かではないんですよ」
「それでもいいので、いつ、どのあたりで目撃したのか教えてもらえませんか?」
「いいですよ。私が見かけたのは、機械室でした」
今は手隙ですし、特別にご案内しますよ、という言葉に甘え、北楯さくらは天野輝に案内されて機械室へと向かう。
リクという人物も、調査の協力をしたいようで自然と二人についていった。
「ここです」
「ここは……投影する機械を操作するところですか」
「はい。ちょうどその機械の影に……おや?」
天野輝の指差したあたりに視線を向けると、キラリと光るなにかが見えた。
「これは……壊れたおもちゃ?」
「キラキラしていますね」
二人の言葉に、リクも軽く首肯を繰り返し同調を示す。
エルがどこかから拾って集めてた可能性があるな……と思った北楯さくらは、天野輝に断った上でそっとハンカチにそのカケラを包んで、機械室を後にする。
3人がフロアに戻ったところで、白井花が再び声を上げる。またか、と 相手にされない空気の中、先ほどとは変わり元気な声で見つけたものを話しだした。
「見て見て! 星っぽい髪飾りが落ちてたよ! これ、もしかして遥ちゃんが昔なくしたと思ってたやつだったりしないかなっ!?」
思わぬ手がかりの発見をした白井花の周りに人が集まる中、【千明聡彰】は待機中の薄い投影が残っている天井スクリーンを見上げながら誰に聞かせるでもなく、一人言葉をこぼした。
「…追憶の旅、か」
「遺されて追いかける側は、辛いよな……。お前さんも、ここであの子が好きだった星空を見ているのか?」
「……なぁ、エル」
姿なき猫に語りかける。
千明聡彰の問いかけに応える声は……もちろん、ない。
担当:繭
あなたたちの辿った道筋、体験した物語を、ぜひ他の方にも教えてあげてください。
合言葉を忘れずにね。
