幸せのカタチ 第三話【個別リアクションE:箱の鍵を開けたい】
魔法の呪文を唱えましょう
「さあてと、ずっとみていてもラチがあかねえからな。そろそろ鍵開けでもやってみるか」
不審者を追いかけたり、聞き込みに行ったりしながら、改めて箱を開けられないかと試してみることにした人たちがいる。
【佐波里玄盛】の一声で、似たようなことを考えた人たちが箱の近くに集まった。
グワシ!
「ん?」
ブンブンブンブン!!
「パワーは、全てを、解決する! ということで、力の限り振り回す!!」
「やめてー! 壊さないでー!」
まず真っ先に箱を掴んでこれでもかと振り回し始めた【白衣浅葱】に、素っ頓狂な悲鳴じみた声をあげる【北楯さくら】であった。
「壊さないよ! 振り回すだけだよ!」
「遠心力で手からすっぽ抜けたら大惨事だよ!」
しばらく箱を取り合うようにしていた白衣浅葱と北楯さくらの手から、それまでのスピードも相まってかなりの勢いで壁にぶつかってしまう。
「「あーーーっ!!」」
ドガァン! と、もはや壁自体を破壊したのではとすら思える凄まじい音を立てて激突した箱は、そのまま床に落下した。
壊したのでは!? 開いたのでは!? と喜哀交じる中、恐る恐る(けれど素早く)北楯さくらがその箱を拾い上げる。
「……壊れて、ない?」
「今ので!?!? ……ちょっとドリルでも持ってきてみない?」
「ダメです!!!!!」
――箱の開錠を試みる人たちが最初に行った共同作業、それは「以降、白衣浅葱に箱を触らせないように距離を取らせること」。
不服そうに頬を膨らませつつ、自分の行動では得るものはなかったとわかった白衣浅葱は、おとなしく他の人たちの行動を見守ることにする。
「あれだけの衝撃を与えてもびくともしないんなら、多分無理やり開けるっていうのは難しそうだね」
「うん。そういえば、青色喫茶にはたくさんの鍵があるよね。イミテーションだけど」
【白井花】の言葉に、そろって「あ。」と声をこぼす面々。
2階の叶探偵事務所からインテリアとしての鍵がたくさん入った宝箱を持ち出してくると、手当たり次第に鍵穴にさしてみる。
なお持ち出しについては青木さんが叶探偵に事後報告と許可を取り付けてくれるそうだ。
「そんなこと言ってませんが!?」というウサ耳の声は綺麗に聞き流されるのであった。
*****
「うーん、無理!」
総当たりで青色喫茶にある鍵という鍵━━ウサ耳さんが管理している鍵まで━━を試してみても、どれひとつ箱の鍵穴には合致しなかった。そもそもささりもしない。
お手上げですというように諸手をあげて鍵で溢れかえっている机に突っ伏す【周】。
白井花も「ないよ〜」と、同じように机に溶けていた。
「そう簡単にはいかないですよね……」
「さすがに手詰まりだな」
嘆息する北楯さくらに、佐波里玄盛が呼応する。
「万策つきたね? やはりここはパワーでは?」
「やめようね」
それまで静観していた白衣浅葱が腕まくりしはじめたところをすかさず周が制止した。
「……最後にダメ元でひとつ、試してみたいな」
「なになに〜? せっかくだからやろうよ!」
ぼそりと呟いた北楯さくらの言葉に、顔をあげた白井花が反応する。
じゃあ、と小さくこぼした彼女は、魔法の言葉を口にした。
「――ひらけゴマ〜」
………………………………。
「「「「ひらけゴマー」」」」
佐波里玄盛以外の声が、綺麗に重なった。
箱は――開かない。
担当:繭
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