幸せのカタチ 第三話【個別リアクションA:姫の行方】
香りの行き先
「また来ちゃったなぁ」
青木はついそう呟いてしまう。
目の前に広がるのは、煌びやかな装飾が施された一室。つい数時間前に、衛兵たちにこっぴどく叱られた記憶が蘇る。
あの王宮へと再び戻ってきたのだ。木箱と同じ香りがするお姫様から話を聞くために。
「さて、どうしたものか……あれ?」
周りを見渡すと、一緒にこちらの世界にやってきた面々がいないことに気づく。
「花ちゃんやさいまるさんは、さっきどこかに走り出していきましたよ」
唯一隣にいた【北楯さくら】が、青木にそう告げた。
「まったくあの人たちは……」
「とはいえ、私たちも怒られたばっかりで気まずくないですか? 私、考えがあるんです」
「考え?」
さくらが言うには、衛兵たちが見当たらないと言っているのであれば、姫はお城の外にいるのかもしれないとのことだった。
「花ちゃんが言っていた姫様特注の香水、このお店が見つかれば、お姫様の手がかりにもなると思うんですよね」
【白井花】が城の侍女から聞き出した、姫特注の香水。その香りは、木箱から香る独特な香りと同じものであるらしい。
この香りと姫、城外であればその両面から調査ができるかもしれない。
そう考えた青木とさくらは、王宮の外にある街へと向かった。
そこには、賑やかな市場の広がる活気に溢れた街並みが広がっていた。
「うわぁ、この中からどうやって手がかりを……」
活気に溢れているということは人が大勢いるということに他ならない。聞き込みができる相手には事欠かないが、事欠かなさすぎて、心が折れそうだ。するとそこへ……。
「姫〜。姫はおらんかね〜」
「姫をみかけた人はいませんか〜」
随分と大きな声で、姫を呼ぶ二つの声が聞こえてきた。この声には聞き覚えがある。
「これって……」
「花ちゃんとさいまるさんですね」
青木とさくらは顔を見合わせると、二人の声が聞こえるところへと足を向けた。
声がする場所へ辿り着くと、そこにはまるで大道芸人のように人に囲まれた【白井花】と【さいまる】がいた。
「どうですか〜? 姫をみかけた人はいませんか〜」
さいまるの声が響きわたる中、青木が二人の首根っこを掴む。
「何をしてるんですか?」
「聞き込みです!」
元気よく親指を立てる花に、青木はがっくりきてしまう。
「また兵士さんたちに捕まっても知りませんよ?」
「でも、この前も私が聞き込みで重大情報を手に入れたじゃないですか! 今度も任せてくださいよ! あ、おばあちゃ〜ん!」
にこにことこちらを見ていた老婆に、花は駆け寄っていく。
「おやおや、お嬢ちゃん元気だねぇ。どうしたんだい?」
「おばあちゃん、このあたりでお姫様見かけなかった?」
老婆は、はてと一瞬首をかしげた後、ふふっと微笑んだ。
「どうしたの?」
「あぁ、いやねぇ…お姫様のへたっぴな変装を思い出しちまってねぇ」
「変装?」
さいまるも興味深そうに二人の話を聞きにくる。
「何をしてるのかは知らないんだけどね、お姫様はよく街にやってくるのさ。甲冑クマさんがね」
「か、甲冑クマさん?」
老婆は両手で大きな何かをなぞるように、身振り手振りで説明を続ける。
少し前から、お姫様は街にお忍びでやってくるようになった。ただそのまま現れたのではお忍びにならないと考えたのか、変装をしてくるのだという。
その姿というのが、城内でかき集めたのであろう軽装の甲冑に身を包み、頭にクマの剥製を被るという、珍妙奇天烈な格好。それを見た街の子供が、甲冑クマさんと呼ぶようになったのだという。
「それは逆に目立つような……」
さいまるが苦笑いを浮かべると、老婆はうんうんと頷いた。
「でもその姿が可愛らしくって。それに、工房んとこの子がお姫様を庇うからねぇ」
「工房の?」
「そう、街の工房で働いている男の子が、あれは姫様なんかじゃない! って、真っ赤になって誤魔化して、甲冑クマさんのところに駆けていくのさ」
青木を含めたその場にいた四人は、ふと空を見上げる。
「あぁそれは……アオハルだなぁ」
空を見上げながら、四人はふふっと笑う。
「でも心配なんだよ。近頃王様は、お姫様の婚約の話を進めたがっているそうだから。あたしとしちゃあ、あの子に頑張ってもらいたいもんだけどねぇ」
その時、カシャという甲冑の音がした。音のした方向に目を向けるとそこには……。
「甲冑クマさんだぁぁぁぁっ!!」
「確保ー!」
「あいあいさー!!」
花の嬉しそうな雄叫びと、さくらの的確な指示の元、さいまるが甲冑クマさんをとりおさえた。
担当:為房大輔
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