STORY

幸せのカタチ 第二話【個別リアクションD:謎の木箱】

その香りの正体は……?

中野のひっそりとした街並みの中に佇む、喫茶Oz。
店員の青木さんが言うには、Ozは『別の世界』と繋がることがあり、そこから来訪するお客さんも利用をするらしい。
平野や青木は、Ozの扉をくぐって別の世界に旅立っていったようだ。喫茶にいた何人かも、バタバタと世界を行き来している者がいる。
十店長の持ち帰った不思議な木箱を巡って、喫茶Ozが俄かに活気付いていく中、ふと机に目を向けると、そこには例の木箱が置かれていた。
一見普通の木箱だが、よく見ると不思議な木箱である。何人かの客がその木箱を囲んだ。
「どこの国っぽいとか、いつの時代っぽいとかわからないかな? 箱に文字や模様が描かれてたり彫られてたりないかしら?」
【北楯さくら】が木箱を手に持った。
確かにこの木箱には、細かな装飾が施されているようだ。
「そうね、いきなり扉をくぐるだなんてナンセンスよ。まずはこの箱自体のことをちゃんと知らないとね」
【白崎羅々】が、どこから取り出したかもわからない虫眼鏡で、木箱の装飾をまじまじと見つめる。
その様子に感心したように【佐波里玄盛】が隣から口を挟んでいく。
「いいか?こういう装飾には、文化やら風土の特徴が少なからず出るもんだ。だからまずは、コイツをじっくり見てみようぜ」
「うん、もう見てるわよ」
一瞬、羅々と玄盛の間に火花が散ったように見えるものの、どうやらこの三人で、この箱のことを調べていくようだ。
「羅々さん、それマイ虫眼鏡ですか?」
「違うわよ、2階に行ったら転がってたのよ」
喫茶Ozの2階には、叶探偵が事務所を構えている。転がっていたというより、それは探偵道具なのでは? というかもうそれは盗難なのでは? さくらは一人ごくりと唾を飲み込む。
「で、そのご自慢の一品で何か覗き込むことはできたのかい?」
「ん〜、そうね。何か糸というか紐みたいな装飾がたくさん描かれているわね。それが結んであるみたいな形? あとは……なんだろこれ、花びら? みたいな形の装飾もあるわね。他に目に入るのは、丸い模様かしら」
「まぁそうだな。肉眼でも見えてるもんな」
そうなのだ。玄盛が言う通り、箱の装飾は割と肉眼でも見えるような大きさであり、元々虫眼鏡で見るようなものではなかった。
「むしろ、見づらいんじゃないのかい?」
鼻で笑うような玄盛をきっと睨みつけると、羅々は喫茶の階段を上がっていく。
「あんた、今に見てなさいよ!」
「嬢ちゃん、あいつは一体何に張り合ってんだい?」
「さぁ……」
興味を失ったのか、さくらは一人携帯をいじりながら答える。
玄盛は張り合いを失ったのか、木箱をいろんな角度からいじり始める。
「糸に花びらに、丸……お、なんだこりゃ、王冠? ティアラか? 嬢ちゃん、装飾見逃してるじゃねぇか。こりゃあどういう意味があるのかねぇ」
「ないわね!」
急な大声に振り向くと、羅々が階段を下りてくるところだった。手には分厚い本を持っている。
「知らない装飾だったからね、本で調べてみたんだけど、該当するものは何もなかったわ!」
「おいおい、そいつぁ2階の探偵さんの持ち物だろうよ」
どうやら羅々は叶探偵事務所に、調べ物をしに行っていたようだ。探偵事務所のセキュリティが心配になる。
そこへ、先程まで携帯をいじっていたさくらが口を開く。
「羅々さんのいう通りですね。この装飾、どこかの何かのマークみたいなものではないようですね」
「なんでそんなことがわかるんだい?」
さくらがクールに携帯を掲げる。どこか理知的な雰囲気に、他の二人も息をのむ。
「SNSです。あとはAIで検索してくれるアプリとかを使って調べてみました。その結果、該当なし。本当に異世界のものなのか、それとも誰かのオリジナルなのか……」
木箱に注目が集まり、ミステリーの一幕のような雰囲気が漂う中、突然木箱の隣に鼻が突き出してきた。
「わぁぁっ!!」
さくらが飛び退く。見ると、【白井花】が木箱をクンクンと嗅いでいた。
「むむ……これは独特な香り。今まで嗅いだことのないこの香りの正体はきっと……」
「きっと?」
「うん、わからないね!!」
固唾を飲んで見守っていた三人が、綺麗にずっこける。
「お、いや? しかしてこの香りは!?」
地面に横たわる三人をよそに、花は喫茶の机へと移動する。そこにはちょうど、Ozの名物である焼きたてのワッフルが運ばれてきたところだった。
「焼きたてワッフルとバターの香り! この香りの正体は……ワッフル!!」
「あんたやりたい放題ね!」
羅々のきつめのツッコミも意に介さず、花はそそくさと座席につくと、ワッフルを頬張りだした。
「あんたが頼んだんかい!!」
ワッフルを美味しそうに食べ続ける花を見つめ、一体私たちは何をやっていたんだろうという思いが去来する羅々と玄盛。二人はそっと和解の手を繋いだ。
「ワッフルは世界を救うんだよ〜」
花は、とても幸せそうだった。

担当:為房大輔

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