STORY

幸せのカタチ 第二話【個別リアクションB:王宮の扉】

異世界の嗜み

喫茶Ozから繋がる異世界への扉。何人かの協力者と共に、青木はその扉をくぐる。
目の前に広がったのは、煌びやかな装飾が施された部屋の中だった。先ほどまでいた中野の喫茶とは全く違ったその様相に、一同は唖然としていた。そんな中、【白井花】が無邪気に騒ぎ出す。
「凄ーい! 絵本に出てくるお城みたいですね!」
その騒ぎを聞きつけてか、メイド服のような恰好をした者たちが集まってくる。そこはかとない気まずさを感じながら、花以外の全員が青木を囲む。
「青木さん、人が集まってきちゃいましたよ。どうしましょう?」
【北楯さくら】が青木に助けを求める。内心、私に聞かれても困るという青木ではあったが、喫茶Ozの店員としての矜持もある。私が皆を導かないと、そんな意気込みを抱いたその時、ふと鼻を刺激する香りがした。
「あれ、これ……」
青木が鼻をすんすんとやり始めたことで、他の皆も香りに気づく。大の大人が集まって、鼻をすんすんやり始めたことで、メイド服姿の女性たちが、かなり訝しげな目線を向ける。
「青木さん、この香り、あの木箱と同じ香りですよね?」
【さいまる】が青木に問いかけた。
「そうですよね。何かの植物の香りなのか、馴染みのない独特な感じ……あの木箱の香りにそっくりです」
入念にすんすんをした結果、どうやらこの香りは別の部屋から香ってきているようだ。
「香りのする方へ行ってみましょうよ」
「でも、あまりにも見られすぎてませんか?」
香りの元を探りたい様子のさいまるだったが、青木の言うとおり、メイドたちに囲まれている今、簡単に部屋を出ていける状況ではなかった。
「こんにちはー!」
急に大声を張り上げたのは、先程まで部屋を物色していた花だった。花は物怖じもせず、メイドたちに話しかける。
「とっても可愛い! どこで買ったんですか? 中野? やっぱアキバとかですか?」
中野や秋葉原なんて概念は絶対にわからないと思うよ、そう思う青木だったが、これはチャンスだ。
「花さんが引きつけてくれてる間に行きましょう!」
ノリノリのさいまるを先頭に、一行は部屋を後にする。その際、さくらはメイドたちに小さく礼をしていた。さりげない心配りだ。
なおも話し続けている花の背中には、どこか「ここは任せて先にいけ。なぁにすぐに追いつくからさ」と書かれているようだった。
「でも、本当になんだろうこの香り」
【高臣里子】が、匂いを嗅ぎながら周りを見渡す。
ある意味この香りが、あの木箱の異質性を象徴していると言っても過言ではない。それくらい嗅いだことのない香りだ。
「この部屋から、ですかね?」
里子は、ある部屋の前で歩みを止めた。確かに、目の前の扉からこれまでに感じていたものより強い匂いを感じる。
「よく探したんだろうな!?」
扉の向こうから、突然大きな声が聞こえてきた。どこか怒気を帯びたその声に、皆は耳をそばだてる。
どうやら複数の男性が、部屋の中で話し合っているようだ。
「探しました! でもどこにも姫様の姿が見えないのです!」
「王や王妃は、姫様が何か勝手なことをしていないか心配されているご様子。姫様がいないなんて言ってみろ。どのような叱責を受けることか」
王や王妃? そんな言葉が聞こえてきた以上、ここはどこかの王国のお城ということだろうか?
「なんだか物々しいですね」
「こんな雰囲気で見つかったら、私たち捕まったりするんじゃないですか?」
「え!? お姫様の誘拐犯みたいな?」
一緒についてきていた、さくら、さいまる、里子が不安な表情を浮かべる。青木としても、異世界でこの人たちを危険な目に遭わせるわけにはいかない。
「皆さん、一度Ozに戻りましょ……」
「みなさ〜ん!!!」
青木が言いかけた言葉を遮るように、皆を呼ぶ声が響き渡る。見ると、花が満面の笑みで駆け寄ってくるところだった。
「花さん、声大きい!」
「す、凄いことがわかったんですよ!」
「凄いこと?」
青木は周りが気になって仕方がないが、他の三人は花の話へと食いつく。
「さっき、このお城の侍女さんたちと盛り上がって、コスメのお話になったんですけど、今漂ってるこの香り! これはこのお城のお姫様の香水の香りなんですって! お姫様専用の特注品だから、他に使っている人はいないって言ってました!」
それは本当に貴重な情報だ。その香りが木箱にもついているということは、そのお姫様が箱に触れている可能性は非常に高い。
「花さん、お手柄じゃないですか!」
さくらが我がことのように歓喜し、青木もふっと力が抜ける。
「よかった。骨折り損にならなかったぁ」
そんな様子を見ていた里子は、ふとある疑問を抱く。
「あの……で、結局ここってどこなんですかね?」
里子のその言葉に、まずはそれを調べるべきだったかなぁと全員が思ったその瞬間、兵士が青木たちを取り囲んだ。
そう。彼女たちは、騒ぎすぎたのだ。

担当:為房大輔

あなたたちの辿った道筋、体験した物語を、ぜひ他の方にも教えてあげてください。
合言葉を忘れずにね。

Xにポストする