あなたの記憶
【ファイルの中身】

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犯人が残したメモを鉛筆で擦ると、筆圧で残った文字が浮かび上がる。

あった――!

被害者は死の直前、何かを書き付けていた。
しかし、そのメモはどこにもない。もし、謎のメモの前にもう一枚あったとしたら。そして、犯人がそれを持ち去ったとしたら――

犯人は、被害者のノートパソコンを持ち去っている。その際、パスワードを被害者から聞き出した可能性があると予想した。

『FearHades』――ハデスを恐れよ。

メモ用紙から浮かび上がった文字列を入力すると、ファイルが開いた。

ファイルの中身は予想通り『ケルベロス』に関する情報――名取裕也の取引の記録だった。
取引を追っていくと『ケルベロス』の製造と流通の方法がおぼろげに見えてくる。

『ケルベロス』は3種類の麻薬を調合して作られている。

原料となる3種類の麻薬はそれぞれ別の人物が作り、『ハデス』と呼ばれる4人目の人物が3種を調合して『ケルベロス』を精製する。
精製された『ケルベロス』は、再度、原料を作っていた3人に卸されているようだ。

取引履歴を見ると、名取裕也は『week』をハデスに出荷し、ハデスから仕入れたもので『candy』を販売していた。

つまり、名取裕也は、『ケルベロス』の原料になる3種の麻薬を作っていた人物のうちのひとりということだ。
そして、名取裕也が菓子に偽装して流通していたように、他にも二人の人物が、『ケルベロス』の材料となる麻薬を作り、何かに偽装して流通している。

名取裕也が隠れて取引をしていた記録をさらに調べると、東京の『どーな』という団体、そして、名古屋市内にある『オールトゥース』という会社の名前が出てきた。

『どーな』は歌舞伎町マンション現場の被害者、歌川舞子の団体じゃないか!
やはり、事件はつながっている。

もう一つの取引先である『オールトゥース』と、元締めの『ハデス』の情報を突き止められれば――!
どうにかして、手がかりを得ることはできないだろうか?