解説
最後まで遊んでくださり、ありがとうございました。
事件の真相と真犯人の特定については一色刑事――の口を借りた鴨乃橋ロンが解き明かしましたので、ここでは、詳しくは明かされなかった謎と、プレイヤーキャラクターそれぞれの背景について解説します。
皆で一緒に(とても長いので、興味のある部分だけでも)解説を読みながら、ゲーム中に話すことがなかった、それぞれのプレイヤーの視点から見た出来事や思い出を話し合って、マーダーミステリーの最後の醍醐味「感想戦」を楽しんでいただければ幸いです。
犯人に情報を流していたのは
誰だったのか
解決編でも触れられますが、依能は違法なハッキングで手本製菓の名取のパソコンからデータをダウンロードしていました。依能の記憶では、その後、更なる情報を手に入れるために盗聴用のコンピューターウィルスを手本製菓に送りますが「ダウンロードされず、盗聴はできなかった」とあります。つまり、ダウンロードされていればパソコンに盗聴ソフトを仕込める可能性がある――ということの示唆です。そして、依能は「手本製菓の事務所のパソコンのデータをダウンロード」して開いていたので、逆に、名取が仕掛けたウィルスに引っかかってしまいました。
真神のキャラクター設定書はノート、長池のキャラクター設定書は手帳になっていますが、依能のキャラクター設定書はノートパソコンになっています。裏面、ノートパソコンの側面を見ると、電源ボタン同様、マイクがオンの緑のランプになっていることが確認できます。
犯人が警察情報を入手する手段について、真神はロンから「捜査会議室にある『あるもの』が証拠になる」とヒントを貰えますが、情報を流していたのは依能、証拠は「依能のノートパソコン(キャラクター設定書)」です。
オールトゥースのDM封筒の
宛名
「内野様」は誰だったのか
手紙の中に出てくる「アヤメ」は長池の妻の連れ子で、長池の記憶では、家族としてまだ信頼を得ておらず、「どう接すればわからない」と距離を感じていました。しかし、真神の記憶で、アヤメの将来の夢は刑事であり「うちの家族に、目標にしたい人がいるから」と話しています。そして、真田からの手紙で、アヤメから「内野がきっと助けてくれるから。あの人は信頼していい人だから」と言われたと書かれています。これは、「うちの(家族=父である長池治夫)がきっと助けてくれる」の「うちの」を「内野」という人名だと真田が聞き間違えたせいでした。
このことは、長池がエンディングAを迎えるとエンディングでも明かされています。
真神蛍子の物語
高校時代の憧れの人で、3年前突然姿を消した「アヤメ先輩」の夢を継ぎ、刑事を志しました。長池から「小学生の頃のアヤメの方が、余程しっかりしていただろう」との印象を持たれているほど、少々不器用なところがあります。警察学校時代も相当苦労したようで、依能から「この程度のことが『出来ないやつもいる』と理解することが一番難しかった」と思われつつも助けてもらい「奇跡の卒業」を果たしています。
プレイヤーキャラクター3人は全員が「連続殺人事件の犯人を突き止め、逮捕する」という同一の目標を持っていますが、その他にも、真神は、一色刑事専用の依頼の箱――通称「ゴミ箱」に入っていた封筒を宛先の人物に渡す、という目標を持っていました。
STEP2では、東新宿倉庫現場の被害者がどのように死んだのかを問われます。
現場写真から、ガラスの破片が血痕の上に散っている、つまり、目撃された不審者は、被害者が死んだ後に窓を割って侵入したと思われること、壁に沿って積み上げられていたコンテナが崩れていること、被害者が男に追われて逃げていたこと(依能が目撃しています)、窓の高さと被害者の身長――などから、内側からドアに鍵をかけた後、窓から逃げ出そうとして転落した事故の可能性が高いと導ければクリアです。この時点で長池が自白した場合は、もっとわかりやすくなります。
STEP4では、事故であったならあるはずがない、連続殺人事件を示すメモがなぜここにあったのかについて問われます。
正解への手がかりは依能のもつファイルの中にあり、先に依能のSTEP1をクリアしなければなりません。依能からオールトゥースがケルベロス製造に関わっていることを聞き、手がかりを求められ、封筒を開けることになれば、クリアできます。
隠し事がないので推理に集中でき、依能と長池のふたりともに関わる事柄があって会話や協力をしやすい半面、求められる推理は一番難しい名探偵役でした。
見事解決したエンディングでは、ロンの協力を得て名刑事になった一色に倣い、長池と依能と協力して名刑事への道を歩みだすことになります。
長池治夫の物語
アヤメが高校生の時にアヤメの母と結婚。連れ子のアヤメと親子関係になりました。アヤメから柔道部の先輩(真田由香)について相談されるも、仕事に追われて後回しにしてしまい、結果として娘を亡くしてしまいます。
長年の刑事のカンで真田由香が娘の死に関わっていると考え、刑事人生をかけて3年間追い続けていました。
娘の命日、墓参りのあとに、娘が死んだ現場の近くで真田を見つけた長池は、恐怖の表情を浮かべて逃げる真田を追いかけます。3年間執拗に捜査を続けた長池は歌舞伎町周辺の地理に詳しく、ビル内の倉庫に立てこもった真田に対し、ビルの裏手の非常階段から窓を割って侵入、真田を追い詰めます。しかし、その時には真田は転落して死んでおり、「3年前だ! うちの娘をなぜ殺した!!」と叫んだ問いの答えは得られないままでした(その声を、高橋将吾が聞いています)。戻ってきた社員二人の声に我に返った長池は、住居不法侵入、さらには殺人容疑で逮捕されることを恐れ、とっさにその場を離れました。
長池は、「娘の死の真相を確かめること」「東新宿の貸倉庫現場へ行ったことを隠す」という目標を持っていました。
STEP1では、現場の違和感について問われます。
『ど~な』公式サイトの棚の画像と現場写真に写っている棚の画像、現場検証報告書に記載がある棚の上の物品と供述調書の証言を比べて、赤いクマのアロマキャンドルが現場から消えていることに気付けばクリアです。
この時、雨宮のほかに、古巣の暴対の刑事とも連絡を取ることができ、依能がどうやってこれほどの情報を得たか不思議に思い、訊ねるように頼まれます。依能がITCの会長の息子であることも知っており、依能(と、心情的に真田)を疑いやすい立場である半面、『ど~な』の公式サイトからアイセキュアの情報に辿り着きやすくもありました。
見事解決したエンディングでは、翡翠刑事に張り合う雨宮に不始末を許され、娘の思いを届けてくれた真神、娘のアヤメと似たところを感じる雨宮とともに、刑事を続けたいと願う物語となっています。
依能秀二の物語
ITC(イノテックコーポレーション)の御曹司として生まれた依能は、黒い噂が絶えない「悪徳企業」である一族を嫌い、実家を飛び出して警察官になりました。警察学校時代は、異色の経歴とプライドの高い性格から孤立していましたが、出自のことを分かっていない真神に懐かれ、世話を焼きます。
自分が手伝わなければ卒業すら怪しかった「あの真神」が、刑事の花形である警視庁捜査一課に配属されたと聞いて、「真神より自分の方が優秀なはず」と証明するべく手柄を挙げることに固執します。
行き過ぎた正義感と焦りから、手柄を得るための手段は違法捜査へとエスカレートし、ハッキングで名取のデータを手に入れたのち、工場へ証拠を盗みに入ります。結果としてそのことを宇野に利用され、連続殺人の罪を着せられるところでした。
依能は、違法捜査を行ったことを隠す、という目標を持っていました。
STEP3では、ロックがかかっている名取のデータのパスワードを探します。
被害者は死ぬ前に何かを書いていたこと、机の上のメモパッドを犯人が謎のメモを書くのに使用したことから、証拠品のメモに被害者が書いた文字の痕跡が残っているのではないかと考えて鉛筆でこすると、文字が浮き上がります。机の上に不自然に空いたスペースとマウス、電源コードから、ノートパソコンが持ち去られていること、ファイルにはロックがかかっていたことから、犯人が被害者からパスワードを聞き出したのではないかと考えればクリアできます。
この時、何をやっているかを共有したり、不審に隠したりした場合、ハッキングしたことがバレやすかったり、後々疑われやすくなるかもしれません。
犯人は盗聴から情報を得て依能にアリバイがない時間に犯行を行っており、意図せず犯人に情報も流しているので、疑われやすい立場でした。死体の形と、自ら話していれば、「ヒーローもののドラマみたいに実家が成敗されればいい」という動機らしきものから、疑われる可能性もありました。
その半面、盗聴の仕掛けに最も気付きやすく、真犯人の筆跡について(盗聴を警戒して非常に歯切れの悪い)翡翠刑事から遠回しなヒントも聞けるので、最も真相に気づきやすい立場でもありました。
見事解決したエンディングでは、翡翠刑事がほぼすべてを察しながら、自分を気遣って黙っていてくれていたことや、一色刑事や真神の美点に気付き、自分のあり方を思い直す物語となっています。
真田由香の物語
最後に、なんとなく憶測はできても確定で描かれてはいない、真田由香の足跡を明かして、解説を終わりとさせていただきます。
チラシ裏面に書かれた告白の通り、ささいな妬みから親友を殺めてしまった真田は、当時世話になっていた『ど~な』の歌川に相談して仕事を斡旋してもらい、オールトゥースに身を隠します。アヤメを殺した薬物の出元は、当時『ど~な』が流通させていた『ケルベロス』の試薬でしたし、歌川は確信犯で真田を麻薬製造に携わらせています。真田はそのことに気付いておらず、歌川に恩を感じていました。
良心の呵責からオールトゥースの告発を心に決めて証拠を盗んだ後、最後に、歌川の所と、アヤメを殺してしまった場所へ赴いて懺悔し、警察に自首、または、自殺するつもりでいました。
手紙の通り、翌日の朝に事務所に入った真田は、殺された湊光太郎を発見します。
麻薬製造の証拠を持ち出そうと考えていた真田は、とっさに落ちていた(犯人が置いた)怪しげなメモと、湊の現金をうばい、そのまま東京へ逃げ出します。
3年前の殺人犯であり、湊殺害の容疑をかけられるかと警察に行く勇気が持てず、歌川に連絡を取って訪問の約束をして、歌川の自宅を訪ねると、またしても死体と遭遇。逃げ出すところを、『ど~な』事務員の村上香織に目撃されました。
混乱したまま歌舞伎町を逃げまどっていると、自分に険しい視線を向ける男(長池)と目が合います。真田は長池の事を知らず、長池は、真神が「初めてお会いしたとき、暴力団か殺し屋の方かと勘違い」したという、迫力のあるコワモテです。麻薬製造の口封じに自分も殺されるのだと恐怖に陥った真田は、必死で倉庫へと逃げ、窓から脱出を試みて転落し、運悪くコンテナの角に頭を打ち付け、死に至りました。
ゲームを終えて
ネタバレについてのご注意
それぞれの物語はいかがでしたでしょうか。
一緒に遊んだ皆と感想を語った後はぜひ、ハッシュタグ「#鴨マダ」をつけて、SNS等に感想を綴っていただけますと幸いです。
マーダーミステリーは、作品の性質上、ネタバレを読んでしまうと遊ぶことができなくなってしまいます。SNSに書き込んだり、人と話す際には、まだ遊んでいない人へのネタバレを避けるようお願いいたします。この作品におけるネタバレの範囲は、以下の事柄を目安にしてください。
外箱の記載や、公式で案内している以外の情報は、ネタバレの危険があると考えて、お気を付けくださいますようお願いいたします。
すべてのネタバレは、「この先にネタバレがあります」など、ネタバレがあることを明示したうえで、ワンクッションおくことで(URLリンクでページをわける、投稿内容を伏せる機能を利用する、など)、自由に投稿していただけます。マーダーミステリーの感想投稿サイトなどもぜひご活用ください。
CREDIT
- 原作
- 天野明「鴨乃橋ロンの禁断推理」(集英社「少年ジャンプ+」連載)
- ゲーム企画・制作・発売元
- StudioOZON
- シナリオ制作、ゲームデザイン
- 九尾まどか
- 謎解き制作
- 海野名津紀(けんぴ。)
- コンポーネントデザイン
- 龍之介、九尾まどか
- WEB制作
- ヨジー
- イラスト協力
- 佐野嘉澄
- 制作進行、動画制作
- 久保よしや
- 制作進行補佐
- 琴音
- 音声出演
- 鴨乃橋ロン:阿座上洋平、一色都々丸:榎木淳弥、シュピッツ・ファイア:八代拓