運命の輪

「ディープアクセスキー」を手に入れ
平穏を望んだ

すべてを思い出したあなたは、もちろん、この図書館棟に残ることを渇望した。

いじめ、絶望、死の選択……あんな記憶など無くしてしまった方がいい。もう未練や後悔など何もない。あなたの魂(アニマ)は自我も記憶も消して、この平和な世界で残った仲間達とともに穏やかに暮らしていくことを願った。

眠りにつく前にあなたにはやるべきことがあった。もう決してこんなことが起きぬよう、過去の運命と本当の意味での「決別」をするのだ。

あなたはある場所に向かう。そこは、もう修復もできず役目を終えた本が処分されるところだった。あなたは日記を取り出した。

「おやすみ……」そう言いながら、あなたはそっとそれを置いた。朝になればこの本はシュレッダーで裁断処理されるだろう。忌まわしい記憶と共に……。

これでいい。あなたは笑った。それは何年かぶりの、心からの笑顔だった。

「ディープアクセスキー」を
手に入れられず
平穏を望んだ

あなたはこの図書館棟に残ることにした。「ディープアクセスキー」は手に入らなかったが、ここにいればいつか自分がこの姿になった理由がわかるかもしれない。

それまではこの場所で、仲間たちとともに秩序を重んじ、穏やかに過ごせればそれでいい。それにここには不思議な心地よさがある。苦悩と絶望の果てにようやくたどり着いた理想の地のような安心感があるのだ。

例えこの先、何度も記憶を消されようと、あなたにはあの日記がある。過去の自分が繋いだ大切な記録。それはあなたにとってかけがえのないものであり、半身でもあり、魂(アニマ)そのものだ。

今日の仕事を無事終えて、あなたはゆっくりと眠りにつく。目を覚ました自分はどんな反応をするのだろうか。穏やかな笑みを浮かべながら、あなたは日記を腕に抱いて静かに意識を閉ざすのだった。

「ディープアクセスキー」を手に入れ
挑戦を選んだ

すべての記憶を思い出したあなたは、再びあの世界に挑むことを選んだ。

いじめ、絶望、死の選択……いちどは絶望した世界だが、あなたはもうひとりではない。今は共に新しい扉を開く決意をした仲間たちがいる。苦労を分かち合い、信用できる仲間がいるというのは、なんと心強いことだろうか! 仲間がいて、あなたがいる。その安心感をあの頃に知ることができていたら運命は変わっていただろう。

いや、もう過去は振り返らない。今、あなたの魂(アニマ)は真っ直ぐ前を見据えていた。

あなたは日記の最後のページにこう書き足した。

“運命は変えられる。Never run away!(逃げるな)”

あなたは日記を音高く閉じる。さぁ、出発だ。ここから新しい「人生」を始めよう。

「ディープアクセスキー」を
手に入れられず
挑戦を選んだ

結局のところ「ディープアクセスキー」は手に入らなかったが、あなたは図書館棟を出てまだ見ぬ世界に挑む道を選んだ。

図書館棟を一歩出れば、あなたにとって未知の空間が広がっている。そこは人間たちの世界。あなたが愛したたくさんの本が生まれては消えていく場所だ。

あなたが何故、禁忌を犯してまでも人間の脳を移植されたアンドロイドになったのかは分からない。それを恥ずかしく思う気持ちもあったし、隠したいと願った日々もあった。

あなたはどこまでもひとりぼっちだったのだ。しかし今は、どんな困難にも負けない強さと、共に戦う仲間たちがいる。

いつか、何かの拍子にあなたがアンドロイドになったきっかけを思い出すことがあるかもしれない。その時は包み隠さず日記に書き足していこう。過去の自分が背負った運命を忘れることがないよう魂(アニマ)に刻むのだ。例えそれが……この世界との「決別」になったとしても。

ライター:Yu

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