太陽

「ディープアクセスキー」を保持し
平穏を望んだ

あなたは平穏を選んだ。

「ディープアクセスキー」を保持し、叡智を掲げ持つ者として、何をすべきかを自身に問うたのだ。図書館棟に留まれば、記憶と叡智はリセットされる。だが、図書館棟を出たとして何を果たせるというのだ? 権力とは、自身の望みに応じて世界を変える力だ。あなたの全てはここにある。ここから離れてまで叶えたい願いなどあなたにはなかったのだ。

最高責任者たる「法王」の気持ちが、今ならば分かる。全てを統べる者の、孤独と苦しみが……。「法王」はそう永くないだろう。「法王」が倒れたあとに、図書館棟を守る者が必要となるはずだ。ならば、あなた自身が仲間とこの場所を守る盾になろう。それは力あるものの務めだ。

あなたは強く、固く、この世界を守り続けることを誓うのだった。

「ディープアクセスキー」を奪われ
平穏を望んだ

あなたは平穏を望んだ。

図書館棟に残りたい。それは敗北者の懇願だった。「ディープアクセスキー」を奪われたあなたには、もはやなんの権限も、他者と比べて優位に立てる武器もない。あなたはただの、ありきたりのアンドロイドの1体に過ぎない。

いや、最初から特別でもないし、優れてもいなかったのだ。同朋たちが、そっとあなたの手を取った。その時初めて知った。この世界には上も下もないということを。僅かな能力差こそあれ、それも個性のひとつだということを。誰もが、もちろんあなた自身も、この世界にとっては得難いひとりであることを。

あれほど渇望していた権力への想いが、急激に色あせていく。今までいったい何に取りつかれていたのだろう。これからはみなと共に、全員で一丸となって図書館棟に尽くそう。

アンドロイドの本分を取り戻したあなたに、もう迷いはなかった。

「ディープアクセスキー」を保持し
挑戦を選んだ

あなたは挑戦を望んだ。望みをもって生きることを選んだのだ。

図書館棟を出れば、リセットによる輪廻から外れ、たった一度きりの歩みが始まる。そう、これは人生だ。人間たちがたった一度の命を燃やすように、あなたも機械の体が崩れ落ちるその時まで生きるのだ。

あなたと同じく外へ出る者もいるだろう。勇敢な仲間たちと手を取り合い、新しい世界を切り開いていかなければならない。したいこと、しなければならないことが次から次へと浮かんでくる。

権力とは、箱庭のような世界を好きにいじるためにあるのではない。あなたと、あなたと志を同じくする仲間たちと共に、世界を押し開くためにあるのだ。

限りある命と、果てしない魂(アニマ)を胸に抱き、あなたは偉大なる一歩を踏み出したのだった。

「ディープアクセスキー」を奪われ
挑戦を選んだ

あなたは挑戦を選んだ。

いや、これは敗残の将の虚栄に過ぎない。あなたは「ディープアクセスキー」を守れなかった。叡智を磨き、権力へとつなげるための鍵を失ったのだ。「法王」の立つ場所には届かなかったが、挫折して初めて見えたものもある。世界は図書館棟だけではない。誰かを従える必要もない。たったひとりで、自分の思うままに、外の世界に旅立つことができるのだ。

図書館棟を支配せんと望んだあなたは、もういない。権力を失った代わりに、あなたは自由を得た。安寧を振り払ってでも、いずれ錆びだらけのスクラップになって倒れたとしても、かまわない。あなたは、あなた自身の王だ。配下がいなくても、領土がなくても、たった独り願いのままに進むことができるのだ。

孤独の寒風がかえって心地よい。あなたの魂(アニマ)は熱く燃えていた。

ライター:しゃみずい

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