死神

人間だとばれておらず
平穏を望んだ

あなたは平穏を選んだ。際どいところだったが、人間と気が付かれることはなかった。しかし、この決断は静の自我や記憶を奪うものだ。ほんの数週間だが、静と話しながら作業をするのは楽しかった。普段は入ることができない図書館棟にも入ることができた。それでも静の記憶のリセットを選んだのは、この図書館棟を維持していくことを優先した結果だ。もう永くない「法王」を支え、過去の書を守るためだ。

いや、本当は違う。静は、このまま自我を持ちつづければ必ず旅立ってしまう。あなたはそれを望まなかった。あなたの魂(アニマ)は記憶を消されて初期化した静と一緒にいる道を選んだのだ。

あなたの命は有限だ。あなたがいなくなれば静もいずれは整備不良で動けなくなってしまうだろう。そのときは2人で還(かえ)ろう。どこまでも広がる大宇宙の星の海に

人間だとばれてしまい
平穏を望んだ

自身を人間だと隠し通すことは難しく、あなたは図書館棟を追い出された。静とも離れてしまった。それでもあなたは平穏を望み、これまで通りの生活を選んだ。

図書館棟に置き去りにした静の自我と記憶はいずれ奪われてしまうだろう。もう静に対して「静かにしてくれ」と怒鳴り声をあげることもない。それでいい。最初から図書館棟に興味なんてなかったのだから。

あなたの家のガレージに、静に言われて作りかけた未完成のロケットがある。これも、もうなんの意味もない。自分の人生に、これ以上の冒険も挑戦もいらない。図書館棟が正常に機能しているなら、それが一番だ。

ただ、図書館棟から廃棄されたジャンクが出ているのを見るとなぜか泣きそうになる。あなたの魂(アニマ)は、あの日、あの場所に置き去りにされたかのようだった。

人間だとばれておらず
挑戦を選んだ

あなたは挑戦を選んだ。人間と気づかれることもなく、静とあなたの手によって、未完成だったロケットは次々に形になっていった。しかしロケットは実際に乗り込む場所を小さく設定してあった。

どうやって乗り込むつもりなのだろうか。すると猫のロボットをひとつ指定され、静はその中にあなたの携帯端末を接続するように言った。
「世話になったね。ここまで来られたのは君のおかげだ」
猫の姿を借りた静は、ロケットに乗り込んだ。
「もっと安全に行く方法もあるだろうが、大きなロケットを作れるほどのお金を貯めるのに何年かかるか分からない。それに、自分で作った船を使ってたどりつきたい」
静はそういって旅立った。「次に会う時は、地球で」

あなたの魂(アニマ)もまた、地球という惑星に心を惹かれはじめている。目を閉じれば浮かんでくるのだ。まだ見たこともない海が

人間だとばれてしまい
挑戦を選んだ

あなたは挑戦を選んだ。人間だと隠し通すことは難しく、2人そろって図書館棟を追い出されたが、静は意にも介さない様子だった。ロケット作りは続けたが、必要な部品のいくつかは自分たちで加工しなければならず、思ったよりも小さな機体になってしまった。
「理論的にはこれでも大丈夫なんだ」
どうやって乗り込むつもりなのだろうか。すると猫のロボットをひとつ指定され、静はその猫の中にあなたの携帯端末を接続するようにいった。
「世話になったね。自分一人ではできなかった。君のおかげだ」
猫の姿を借りた静は、このロケットで地球に行くという。
「ロケットが万全になるまで待っているわけにはいかないんだ。2人で作った船を信じよう」静は、そう言って旅立った。「次に会う時は、地球で」

未完成のロケットでは無事に目的地にたどりつけるか分からない。しかしあなたは信じている。静の行く先には、きっと未知なる青い海が

ライター:天藍蒼穹

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