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2020.12.12

【マーダーミステリーアドベントカレンダー】偉そうに語るマーダーミステリーのこと / 久保よしや

こちらはディアシュピールかんちょーさんが主催している
2020年マーダーミステリーアドベントカレンダーに寄せた記事になります!
毎日沢山の方が更新なさるので是非チェックしてみてくださいね。

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▼:はじめに

どうもこんにちは、久保よしやです。きつね君と呼ばれています。
マーダーミステリーの制作監修(代表作:ヤノハのフタリ)をはじめ、Rabbitholeディレクター、ディアシュピールDC、マダミスハウスプロデューサーなどをしています。

それ以前には新宿で3億6千万円(超大金!)くらい使ってinSPYreという脱出ゲームの店舗を立ち上げたり、人狼やボードゲームなども店舗立ち上げやコンサルタント、イベントなどを行っていました。あんまり知られてはいませんが旅行業の資格とかもっていて、某旅行会社で法人向けに営業をしたり、新規開発事業部とかを起したりしていました。

ノンセクシャルで、9年くらいの付き合いになる彼氏がいて、多少お財布と時間に余裕のある人間です。あ、猫を2匹飼っています、かわいいよ。…と、まあこのように余談も多い、めちゃめちゃ長文な感じになると思うので適宜読み飛ばしてくださいませ。

また今回かんちょーさんにお誘いいただいての参加です!本当に嬉しかったです!(かんちょーありがとう!)
アドベントカレンダーみんな面白い記事を書いてらして、とっても勉強になりました!私は特に木皿儀さんの記事が好きです!(https://note.com/one_hayato/n/naf4f6f6cef68)この木皿儀さん記事を読んだ時に、アドベントカレンダーのターゲットと言いますか、所謂主要購読者はクリエイターなんだなと切に感じました。哲学とかもそうなんですが気づいてみれば考えてみれば当たり前のことのようなのに言われてハッとしたり思考を伸ばせたりするのは素晴らしい!
構造メカニクスだったりとか、そういう話をされる方が中心で面白かったので(なのでプレイヤー視点が強そうなにっしーさんや田口さんの話も楽しみ!)きつねもちょっとは「っぽいこと」を書いてみようと思います!

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▼:クリエイターに伝えたい2つの設定と設計

以前に「マーダーミステリーの作り方」という電子書籍を昨年2019年の秋のゲームマーケットを皮切りに販売しました。今年2020年の夏に終売したのですが、結果的には700冊140万円程の売上げました。沢山の人に読んでいただけて嬉しかったですし、同時に制作に対しての興味関心がプレイヤークリエイター問わずあるのだと実感しました。作り方には制作のスキームや流れといったものを掲載していたのですが、今回はそこから少し発展した話について書こうと思います。
目標設定の仕方についてと、物語に於ける選択と葛藤についてです。目標設定に関してはある種マーダーミステリーというよりクリエイター全般に当てはまることかもしれません。

【目標設定の仕方】

(問題提起)
マーダーミステリーを制作するにあたり、そもそもの制作の動機は何でしょうか?(或いは何だったでしょうか?)お金を稼ぐ、名前を売る、好きだから、回りに広めたいから、楽しんでほしいから。様々な理由があると思います。どの動機も大変素晴らしいものと思います。考える→作る→遊んでもらうという流れの中で、もっと広く遊んでもらったり或いは金銭を獲得したい、クオリティをあげたいと更に多くを望むのならば、目標設定をしてみるのはいかがでしょうか?
気持ちが前に走ってしまったり、目の前にある作業をこなしたりで、何だかんだ目標を立てていない方が多く見受けられます。作品監修をする中で必要であれば可能な限り目標設定をするようにしてきました。何故かというと、目標設定をすることで「中長期的な行動ができる・見据えることができる」「やらないことを選ぶことができる」というメリットがあると考えるからです。

(解決方法の提案)
私の考える目標設定項目は2つあります。定量と定性です。定量というのは物事を数量や数値で表すことの出来るもの、定性というのは反対に数値化出来ない感覚的であるもののことです。マーダーミステリーで例えると、★のついたアイテムを3枚獲得するは定量で、真相を明らかにするは定性といった感じです。大体なんとなくで定性の目標を持っている方は多いようです。先述した制作の動機やキッカケがそれにあたります。とはいえ、定性は感覚値でしかないので、定量で補足したり見える化してみましょう。定量と定性はバラバラの目的や方向性の違った目標でも構いませんが、紐づきがあったり、定性のより具体的なものが定量であるとイメージしやすい目標となります。この2つの目標をそれぞれに設定してみましょう。

(例・具体案)
定性:マーダーミステリーを制作して多くの人に頼んで喜んでもらいたい!
定量:期間1年間で作品を3つ制作し金額300万円売上げる。自主公演で1000人集客。

定量はここでは割愛しますが時間や金額のような数値化出来るものを全て書き出してみるとよいです。ちなみに金額や時間を計算する中で必然的に原価やざっくりの見通しを立てることになると思うので、そこもミソです。またチームを組む際組んだ際にも共有しやすいようにシートなどにまとめておくとよいです。

(結論とベネフィット)
目標設定をすることはプロセスや行動を明確にします。1年後であればそれを12等分すれば1か月後の目標になりますし、4等分すれば週毎の目標になります。そうやって細分化していくと「今やるべきこと」「今やるべきでないこと」が見えてくるはずです。意外と後者のやるべきでないことを選び取っていくことのほうが大事で、その結果人に頼んだり後回しにして優先順位を決めたりと効率的になっていきますし、多くの作業や処理を行うことが出来ます。また目標を公開したり周りに伝えるのもよいかもしれません。
定性の目標は自己成長の振り返りに使えます。定量の目標は未来を見据えるのに使えます。あと定量の目標設定は何だか綺麗なスタートを切れているようなそんな気にさせてくれる魔法のチカラがあるので人によってはモチベーションを高めるのにも良いです。(だからこそやった気になって設定して終わり!ってのもあるので注意が必要です!)

【物語に於ける選択と葛藤】

こちらは目標設定というより、好き好きの問題かもしれません。個人的に良作と言われるものには「選択」と「葛藤」が含まれているように思えています。目標設定の話が具体的な話や手段だとしたら、こちらのお話しは抽象的な内容になります。
物語の中に含まれる選択と葛藤は、簡単にいうと「やってもやらなくてもいい・AかBか」という選択と、「やってはいけない・やらなくてはいけない」という葛藤という意味で、ジレンマの設計の一部と考えています。この2つを上手く設計することで、物語の中のプレイヤー(貴方自身)とキャラクター(演じる対象)が紐づき体験感が生まれると感じています。

この要素が重要だと気づいたのは自身のマーダーミステリーの体験と、マーダーミステリー後に話す感想戦の多くが自分の取った選択についてと、自分が取らなかった取れなかった時の心情について話していることに着目したからです。

選択はキャラクターである「他人事」を、選択という行動をさせることで「自分事」にシフトして没入感や体験感を生み出します。またその選択後に密接な回答や則したレスポンスがあると更にグッと世界観に引き込まれることは間違いないです。その為、選択や投票などで生まれ分岐するマルチエンディングは物語体験に於ける有用な手段であると言えます。逆に選びとった選択がその後のレスポンスと乖離していると、プレイヤーとキャラクターも離れてしまうので注意が必要です。物語にとって意外性とか死角からのアプローチもとても重要なファクターですが、選択に於いては納得感や体験感、没入感を重視したほうがよいと言えます。

葛藤は面白く難しい要素です。してはいけない、しなければいけない、ルールやシステムに従うことで発生する心の摩擦とでもいうのでしょうか。ルール上システム上「そうなっている」のでプレイヤーとしてしなければならないという思いは焦りや怒り時に悲しみといった感情を掘り起こします。それがキャラクターにとっての行動や描かれている感情とリンクするとき、疑似的ではありますが、プレイヤーとキャラクターが気持ちの面で共感したり繋がったりする瞬間が発生します。非常に面白いんです。プレイヤーである客観にプレイヤーである主観感情が乗り、それがキャラクターに繋がる。根本的な感情の発生地点は違うのですけれど、それが自分事になったようでキャラクターの愛着が増すのです。

選択と葛藤どちらもが綺麗に配置されているとそれだけで、私はそのシステムや物語が好きになれます。他人事から自分事へのシフト、没入感の増幅のために選択と葛藤における感情導線と物語の関係性を是非考えてみてください。

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▼:定石?!業界がスケールする3つの要素

マーダーミステリー業界がもっとスケールするにはというところで、弊社StudioOZONの三原さんの記事では(https://ozon.jp/801/)IPの創出やメディア展開がキーになるのではと予想されていました。私は少し違った角度で、もっと根本的なところ、つまり店舗や実際にユーザーが触れる部分について少し分析していて、今後必要になるのは下記に挙げるこういう要素なのではと考えています。逆に考えると、今のうちにこういう取り組みを取っておくと業界的なポジショニングやビジネス的なスケールが出来そうだなと思っています。

・多人数化(一回の公演の人数を増やして)
・簡易化(システムをコンパクトにしたり、時間を短くして、体験の間口を広げる)
・高単価化(公演に付加価値をつけて)

実はこれリアル脱出ゲームのSCRAPさんや、人狼ゲームなどが通ってきた道です。私は自己紹介でも述べたようにここ10年くらいの脱出ゲームや人狼やボードゲームを見てきました。当たり前の話なんですけど、決まって大体多人数化と簡易化を行うことで業態は稼げる構造にシフトするので安定しはじめます。そして高単価化は棲み分けを実現する傾向にあります(ただ殊更サブカルチャー分野のユーザー層や、嫌儲主義な方が多いと失敗への階段になることもしばしばです)
あとは高単価化とはちょっと違うのですが、周辺アイテムで収益化するというのもファン層の育成やブランディング的な観点からよいと思います。

こういった目線で制作されるものがもっと増え、認知され、広まっていけばいいなと思いますし、自分たちもそういった動きをしていけたらと思っています。具体的には最大30人出来るマーダーミステリー「パリのカジノに魅せられて」を広めたり、舞台化や映像化、少人数短時間で出来るゲームの開発(close to youや銀の瞳の君を求めて)などがあたります。一緒にやってくれる人を募集しています!

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▼:さいごに

さて!完全に私見でしかないのですが、如何だったでしょうか?「っぽいこと」書けてたかな?元々かなりのトピックスを用意しちゃっていて(&まとめるのが下手)8000字とかになってたんですけど削りました!メカニクスとかはやっぱりプロには敵わないので監修とかコーディネート的な観点が多いかな。ちょっとでも確かになって思ったりハッとしてもらえたら嬉しいな。もうちょっとデータを提示出来ればよかったよね、解りやすいし。今度また機会があれば、こちらに大好きなプレイヤーとか、二度と関わりたくないTwitterでブロックした厄介なマダミス製作者とか、個人でやってる凄腕ゲームマスターや、そういっためちゃめちゃ個人的でどちらかというとプレイヤー目線的な話を書きたかったりします!あとは、めちゃめちゃごたついちゃった案件とかも失敗談としては面白いかもね(ゲス顔)マダミ新年会とか展開する作品とかの宣伝をすごい挟みたかったけど長くなっちゃうからやめるーーーーー!あ、ゲムマ2021春企業ブース受かったら色んな企業さんや団体さんと共同で出る!一緒に出よう!応援して!それから、OZONメンバーの田口さんや三田たたみさんもこのnoteで投稿するのでチェックしてみてくださいね!