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2020.12.03

【マーダーミステリーアドベントカレンダー】マーダーミステリーの未来について / 三原飛雄馬

こちらはディアシュピールかんちょーさんが主催している
2020年マーダーミステリーアドベントカレンダーに寄せた記事になります!
毎日沢山の方が更新なさるので是非チェックしてみてくださいね。

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▼:初めに
ラビットホール新宿店で公演されている『聖剣王殺』や、ポケットマーダーミステリー『星屑の彼方で』、『終末のワンダーランド』等を作っているStudioOZONの三原飛雄馬です。本業は玩具の企画をずっとやってきていまして、趣味でマーダーミステリーやボードゲームを作っています。最近は、イエローサブマリンのホビーベース様から『赤い扉と殺人鬼の鍵』、日本卓上開発様から『トリックギア』というボードゲームを出していただいています。

 ディアシュピールのかんちょーさんからお声がけいただき、恐れ多くもアドベントカレンダーの記事を書かせていただくこととなりました。
 何を書こうか悩んだのですが、きっとマーダーミステリーに興味がある、特に制作に興味のある人たちが読むのだと思いますので、マーダーミステリー業界の明るい未来について、勝手気ままに妄想を交えつつお話ししようと思います。

▼:マーダーミステリー業界の未来予想図
 これは『聖剣王殺』のファンブックにも書いていることですが、2019年の5月の「ゲームマーケット春」の後、私が『聖剣王殺』の企画をラビットホールの酒井さんのところに持ち込んだとき。その企画書に、まだ影も形もない日本のマーダーミステリー業界の未来予想図を書いていました。
 企画書には大きな丸が2つ書かれていて(画像参照)マーダーミステリーは2つの形態がメジャーとなり、2極化していくだろうという話で、1つはリアル脱出ゲームや人狼のような店舗型のリッチな体験を売りにした数千円の参加費で成立するビジネスモデル。もう1つは同人でもっと安くTRPGのシナリオ集を作っているような人たちによる自由な作品の市場。どちらがメジャーになるということではなく、リッチな体験感を売りにする店舗型と安価で敷居が低く自由な同人作品が、両輪で業界を形作っていくだろう、という予想でした。
 コロナでオンラインが流行ったという予想外の流れはありましたが、今は都内どころか全国に店舗が多数でき、毎日のように同人制作者様たちの新作情報がTwitterに溢れ、数百本のマーダーミステリーが遊べるようになっています。当たらずとも遠からずという結果だったのではないでしょうか?

 では、今後はどうなるのか? 黎明期を超え、花開いたマーダーミステリー業界はどうなるかについて、予想していきましょう。

①IP創出の可能性(IP=Intellectual Propertyキャラクターなどの知的財産)
 未来を予想するには、まず似たような業界から類推するのが良いかと思います。マーダーミステリーはTRPG(テーブルトークRPG)や人狼、リアル脱出ゲームに似ているとよく言われます。これらのゲームジャンルにヒントがあるかもしれません。
 TRPGは、国内ではグループSNEさんが『ロードス島戦記』でブレイクし、角川書店と組んでのアニメ映画化、コンピューターゲーム化などメディアミックス展開で大成功を収めました。元々はパソコン雑誌のコンプティーク誌上での『Dungeons & Dragons』の紹介リプレイ記事からスタートしたもので、元々原作小説があったり、元となるゲームシステムがあったりしたわけではありません。注目したいのは、TRPGという遊びがIP創出の場になっているということです。
 例えば、漫画であれば週間少年ジャンプは毎週アンケートを行い、こまめに読者の感想を作家にフィードバックし、編集と議論しながら作品作りをしているわけですが、それと似たようなことが遊びの中で成立していました。TRPGはゲームマスターがシナリオ、ゲーム展開を考えて、5~6人のプレイヤーたちに遊んでもらって、ゲーム後に感想を言い合ってフィードバックを受け、それを元に次の展開を考えていくという、PDCAサイクル(Plan→Do→Check→Action)が遊びになっています。
 マーダーミステリーも同様にIP創出の場になりうるのではないかという予感はしていて、実際に『聖剣王殺』もラビットホールのゲームマスターである中島咲紀さんや江島志穂さんが公演ごとにお客さんのフィードバックを元に演出を調整して改善していき、多くのファンを獲得し、ファンブックやグッズが人気になっています。
 もしかすると、マーダーミステリーという遊びのフォーマットを通して、これから新たな人気IPが生まれてくるかもしれないと思います。

②メディア展開
 つい先日、『マーダー★ミステリー ~探偵・斑目瑞男の事件簿~(仮題)』というマーダーミステリーをベースにしたドラマが2021年3月にABCテレビで放映されるというニュースが出ていました。
 マーダーミステリー『遠き明日への子守唄』で人気のAGATAさんも出演するマーダーミステリー配信公演『鬼棲む火人の影法師』も、役者がマーダーミステリーの配役を演じ、視聴者が犯人投票を行うという手法にチャレンジしており注目しています。オンラインでのZOOM配信なので、このコロナ禍でも安心して楽しむことができます!
 近いところではボードゲームの『ハコオンナ』や『惨劇RoopeR』といったボードゲームも舞台化されていましたし、人狼では人狼ゲーム自体をベースにしたコンシューマーゲーム『グノーシア』や映画『人狼ゲーム デスゲームの運営人』も話題になっています。
 おそらく、今後マーダーミステリーを起点としたコミック化やドラマ化、映画化、コンシューマーゲーム化など、明るい話題がどんどん出てくるのではないかと楽しみにしています。

③市場の急拡大
 これだけ盛り上がってきている新しい体験型ゲームですから、有名企業やクリエイターさんたちも放ってはおかないことでしょう。
 『新サクラ大戦』や『文豪とアルケミスト』のイシイジロウさんもマーダーミステリーにアンテナを張っているとインタビューで答えている記事もありますし、感度の高いエンタメ企業は既に動き出しているのではと思います。
 玩具業界におけるボードゲームの国内市場が130億円前後。リアル脱出ゲーム等の体験型謎解きゲームの市場は、最大手のSCRAPさんが33億円だそうなので、全体で100億円前後くらいでしょうか?
 マーダーミステリーはこの両方の市場を狙っていける遊びです。グループSNEさんのパッケージ型マーダーミステリーはボードゲーム販売店でも人気ですし、謎解きゲーム制作で活躍されていたぺよん潤さんは人気のマーダーミステリーを数多く作っており、専門店シンジュクジンチさんで展開しています。先月には新大阪からすぐの西中島にオオサカジンチもオープンしています。マーダーミステリーを遊べるボードゲームカフェも増えてきています。このアドベントカレンダーを企画してくださったボードゲームカフェのディアシュピールさんでも、めちゃくちゃ面白いマーダーミステリーをたくさん遊べます。
 親和性の高い市場があるからこそ、マーダーミステリー市場は急激に拡大していくことでしょう。SCRAPさんのリアル脱出ゲームは各種キャラクターの版権を持つライセンシーから引っ張りだこですが、同様にプロモーション施策としてマーダーミステリーがもてはやされる日も来るかもしれません。

 急成長を遂げている魅力的な市場ではありますが、しっかりとマーダーミステリーの文化とファン層を形作っていくことが大事です。専門店にはクリエイターの皆さんが想いを込めて作った本当に楽しい名作マーダーミステリーがたくさんありますし、同人作品にもめちゃくちゃ面白いマーダーミステリーがたくさんあります。そういった作品を全国の専門店が協力して地方でも遊べるようにするとか、同人作品をしっかり発掘してユーザーとマッチングさせるとか、そういうことがマーダーミステリーの未来のために必要なのではと思います。

 ぜひそんな未来を作っていければと思いますので、みんなで協力していきましょう!
以上、StudioOZON三原のマーダーミステリーの未来についての話でした!

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■マーダーミステリー配信公演
劇団ZTON オンライン公演 vol.2「鬼棲む火人の影法師」
http://office-zton.com/onisumu01.html